2009年2月8日日曜日

素材と人

去年からニットカフェや出張教室の生徒さんからオリジナルの糸の注文がありました。それがすごく嬉しくて。まず40色以上のなかから好きな色を選んでもらい、それを私が糸にします。どれも自分では思いつかないような素敵な色あわせで紡いでるあいだも出来上がりを見ていただく瞬間もとても幸せです。

まだ作品の写真が揃っていないのでそれは後日ここでアップするとして…

atricotの紡ぎ糸を買って下さった方はみんな口を揃えてこう言ってくれはるんです。



「編んでて楽しい!飽きない!」



めちゃくちゃ嬉しかったのですが、それと同時に自分を恥ずかしく思いました。



編んでて楽しいっていうことはその糸と触れて楽しいということです。

atricotは編んでる作業はいつも楽しく思っていますが、素材に触れて楽しい!っていう感覚はあるのだろうかと。



もちろん、日頃から羊!羊!って言うてますから素材には目を向けていたつもりなんです。でもその素材のよさばかりに頼ってしまって自分自身が楽しめていたかどうかはわかりません。もう手にすることがあたりまえになってしまったんです。そして忙しさにまみれて早くその作品が完成しないかなとばかり考えていました。



素材には頼るくせに作品ができたときって「大変やったけどええのができたなぁ。」と満足しているばっかりで、そこで「羊よ、ありがとう。」って思ったことあんまりなかったんじゃないかなって。そのくせ作品を指さして「これはこうやってこうやってこうやってできました!」って言いたくなる。見る人にとったらそんなことどうでもええっちゅうねん、と自分でつっこみつつもこんなけ頑張ったよーっとか、これは羊さんがね…ていうことをついつい言いたくなってしまいます。



それが少し変わったのがスピンハウスポンタさんが発行しているおなじみ「SPINNUTS」で連載している企画です。最近出たばかりのNO.72に載ってます☆

難しいお題でしたが、技術や経験に頼らずにひたすら素材と会話しようと試みました。それで素材と一緒に楽しむ感覚…初めて羊毛を手にし、すごいなぁ!って目をキラキラさせてたときの感覚に戻れたような気がしました。



なのでもっと素材と戯れてみようと思い、目の前の素材を知るということに気持ちを傾けてみました。そしたら、なんというか自分自身がものすごい幸せな気持ちになったんです。ニットをして何年もたちますが今までなんでこんなことに気づかなかったんだろうと思います。

こんなんが欲しいと思って、それにあう糸を決めてゲージ編んで製図して編むという一連の作業のなかに、素材と向き合う時間をつくるんです。いろいろ話しかけてみます。例えば「こんなかんじにしようと思いますがどうですか?」って(笑)まぁ当然うんともすんとも言うてくれないのですが、作業が思うように言ったとき「そうですか。おおきに。」と返事します。危険な人ですか?そんなことないですよっ!

私みたいに、口に出さなくてもいいとは思いますが(笑)

それまで素材にはうむを言わせず素材を思うとおりにしようとしていたのですが、それをいったんやめて素材と自分を対等にします。

本来は素材のほうがずっと上だと思うのですが、そう考えると今度は素材に媚びてしまいそうになるので今の私は素材と対等に考えるくらいがちょうどだと思います。

そうするとなぜか自分がすごい気持ちがよくなります。なんかうまく言えませんが、一言で表わすと「気持ちがいい」のです。

言葉にしようとすると難しいのですが、きっと糸に触れた方なら誰でも感じることのできる感覚だと思います。



もしなにか編んでいる方はその糸になにか一言声をかけてみてください。

「シャリっとしてますね。」

「フワフワしてますね。」

「ちょっと重たいです。」

「毛足が長いですね。」

「肌触りがイマイチですが…」

「色の出具合がキレイですね。」

「ちょっと窮屈そうですね。」



いいことも悪いこともなんにせよあると思います。

でもそこからその糸が語りかけてくれるときがあるんです。なんの変哲のない糸でも、他の糸とあわせやすくて頼もしい存在になったりとか、重たい糸でも小物にしたら完成度が高くなったりとか、いろいろな発見があります。

編んでいるあいだ、指先の感触とか見た目とかいつもより五感に集中して糸を見てみるとまだまだ知らなかったことがたくさん出てきてすごくおもしろいんです。たとえ作品が失敗に終わったとしても、いろんな気づきをくれた素材に「ありがとう!」って心から思います。



決められたものを編んでいるとどうにか完成品に近づけようとか正確に編もうとか、完成形に気持ちが傾きがちになってしまいがちですが、そういう方こそちょっと立ち止まって素材に感謝してみてください。編み終わってしまうのが惜しいくらい、素晴らしい素材に出会うかもしれません☆



私もまだまだ素材との物語がはじまったばかりなので、これから楽しみです♪










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